2020年8月5日水曜日

パキスタンのブルッカイト・イン・クォーツ

パキスタン、バーラン


「プラチナルチル」とも呼ばれ、アクセサリーとしても人気の高いブルッカイト・イン・クォーツ。

水晶の中に針状の鉱物が内包するものは他にもありますが、これは意外と見る機会が少ないかなと思います。

この荘厳な感じがいいですよね笑



名前:板チタン石、ブルッカイト
英名:Brookite

組成:TiO2

モース硬度:5.5-6

晶系:直方晶系

分類:酸化鉱物

(mindatより)


水晶の情報も載せておきます。


名前:水晶
英名:Rock Crystal、Quartz

組成:SiO2

モース硬度:7

晶系:三方晶系

分類:酸化鉱物

(mindatより)


縦、横、高さ共に大体2〜3cmの標本で、げんかつぎさんでの購入品です。



まずブルッカイトについて書くと、

ルチル(金紅石)と成分は同じだけど、結晶構造が違うものです。

和名では「板チタン石」とも呼ばれ、その名前のとおり、大きくなると板状の結晶がよく分かります。



この写真はお気に入りの部分を映したものです。

とても綺麗に針状のブルッカイトが確認できます。


そしてブルッカイト・イン・クォーツに似ているものがあります。

それがブラックルチル・イン・クォーツです。

ブラックルチル・イン・クォーツはルチルが入ってるわけではなく、黒いトルマリンが入っています。

このように、水晶の中の針状鉱物を「ルチル」と表現することも多くあるため、少しややこしく感じるかもしれません。



mindatで産地について見てみると、Kharan District という産地はたくさんブルッカイトが採れているようなので、この石のラベルにある「バーラン」という地名は、この Kharan District のことを指しているのかなと思っています。




ブルッカイト・イン・クォーツ、
別名プラチナルチルとも呼ばれますが、
「ブルッカイト=プラチナ」
ではないことは、言わずと知れたことですね。

「プラチナ」や「ゴールデン」など、その名前の持つ力があります。

いつの世も人々を魅了してやまない、ゴールド、シルバー、プラチナ。

多くの鉱物は、いくつかの元素が地殻の中で化学変化を起こしてつくられますが、金、銀、プラチナなどの貴金属は
「元素鉱物」といって1種類の元素からできています。

さて、この元素とはなんでしょう?


(鉱物肉眼鑑定辞典より)


この宇宙に存在するすべてのもの、この地球も、私たちの体も、すべての物質は元素でできています。

物質を構成する最も小さな粒は「原子」ですが、原子は実在するものであるのに対し、

「元素」は原子の性質、または概念とも言えるでしょう。

元素はもとをたどれば、すべて宇宙でつくられていますが、貴金属の元素がどこでどのようにつくられているのか、長い間分かっていませんでした。

しかし最近の研究で、
「中性子星」が合体する時につくられる、ということがわかってきました。

「中性子星」というのは、角砂糖1個分で約10億トンもある、とても密度の高い天体のことです。

角砂糖1つで10億トンって…地球レベルでは理解を超えた話ですが。


(Wikipediaより-中性子星 右上方向にジェットを放出するほ座のベラ・パルサー。中性子星自体は内部に存在し、ガスに遮蔽されて見えない)


宇宙ではごく稀に、2つの中性子星が合体することがあり、その時の激しい衝突によって、貴金属の元素ができ、ガスやチリとなって宇宙にばらまかれます。

それらは宇宙を漂い、星を構成する材料の一部となっているのです。

この地球がつくられた時にも、そのような貴金属の元素が含まれた材料が使われたのでしょうか。

最近では、「40億年前、200億トンもの隕石の衝突によって貴金属がもたらされたのではないか」という説も出てきています。

金属は、他の物質と反応することにより、美しさを失っていくものですが、金、銀、プラチナなどの貴金属は、他の元素と反応しにくいため、その美しさを保つことができます。


中でも、きらびやかな輝き、褪せることのない華やかな色を誇るのはゴールドです。



他の金属にはない、そのまばゆい輝きは、多くの人々を惹きつけ、権力と欲望の対象にもなってきました。

しかし、意外にも金は、元素の中で「ナンバーワン」の特性がひとつもありません。

そこはなんといってもプラチナでしょう。


(内包している針状の「プラチナ」ルチル)


プラチナは他のどんな金属よりも
「耐酸性」「耐熱性」に優れています。

高い耐腐食性を持つことから、永遠の象徴であるダイヤモンドよりも、また金よりも、プラチナこそ永遠の名にふさわしいのです。


そして、いつでも金より格下とされてしまうのが銀。



空気中の硫黄酸化物と反応して、表面が黒くなってしまうことや、流通量が多いという理由もあるでしょう。

しかし銀は、すべての元素の中で、
電動性の高さ、ナンバーワン!
光反射率の高さも、ナンバーワン!


古代エジプトでは、銀は金の2.5倍の価値があったとも言われています。

銀は金に決して引けを取らない誉れ高き金属なのです。

見た目の美しさのみならず、ごく稀にしかつくられることがなく、存在する量自体が少ない、という希少価値もあいまって、私たちはこれらの貴金属に魅了されてしまうのですね。


ちなみに…

金→黄金(こがね)
銀→白金(しろがね)
銅→赤金(あかがね)
鉄→黒金(くろがね)
鉛→青金(あおがね)

昔はこの5つの金属を
「五色(ごしき)の金(かね)」と呼んでいたそうです。

プラチナは白金と書きますが、「しろがね」ではなく「はっきん」と読みますね。


お読みくださりありがとうございました。

2020年8月1日土曜日

モロッコorアルジェリアの石質隕石(NWA869)

Morocco/Algeria


先日、上空で火球が確認されてから、千葉県で隕石が発見された、というニュースが話題になりましたね。

その周辺に、まだ隕石が残っているとする話もあるので、夢がありますね笑

その隕石は「習志野隕石」と名付けられましたが、その習志野隕石は「コンドライト」という分類に入るので、同じコンドライトの隕石を取り上げてみたいと思います。



名前:NWA869


大きさは1cm〜1.5cmくらいの幅で、東京サイエンスさんでの購入品です。


分類は「普通コンドライト」のL4-6 というものになります。

中には L4-5 としているものもありますが、ラベル通り L4-6 としておきます。


隕石には、隕鉄、石質隕石、石鉄隕石と分類がありますが、「習志野隕石」と、今回ご紹介する「NWA869」は、両方とも「石質隕石」のコンドライトという分類です。

自分も今回調べてみて初めて知ったのですが、コンドライトの中の種類分けも多いですね笑



「コンドライト」で、ここまで分類が広がります笑

1つ赤線で囲っている
「Ordinary chondrite meteorite(普通コンドライト)」が
NWA869と習志野隕石の分類先になるそうです。

そしてここからもグループ分けがされています。

習志野隕石はここから先の分類は分かりませんが、NWA869は



「Ordinary chondrite meteorite」の中でも、赤線で囲っている
「L chondrite meteorite」に分類していて、



「L chondrite meteorite」の中でも分類が分かれますが、

ラベルに「L4-6」と記載されているため、「L4 chondrite meteorite」、
「L5 chondrite meteorite」、
「L6 chondrite meteorite」に入ると思われます。


隕石は、その多くが惑星にまで成長することのできなかった小惑星です。

小惑星も惑星と同様に、太陽の周りを回っているのですが、時々地球の重力に引き寄せられ、地上に落ちてきたものが隕石となります。

他には、月や火星の一部だった岩石が、何かの拍子に宇宙空間に放り出され、地球の重力に引き寄せられて落ちてくるものもあります。


(矢印の石が置いてある所がこの石の産地)


それらが地球にやってくると、まず大気とぶつかって熱や光を発します。

この段階ではまだ「隕石」とは呼ばず、「火球」(かきゅう)と呼びます。

小さなものは、すぐに燃え尽きてしまいますが、ある程度の大きさがあると、一瞬光り輝く様子を見ることができます。
これが流れ星ですね。

燃え尽きずに着地したものを「隕石」と呼びますが、どのくらいの大きさがあれば隕石になるのでしょう。

直径7mほどのものが、半年に一度くらいの割合で落ちてきているのですが、これでも燃え尽きてしまうそうです。

2013年にロシアのチェリャビンスク州に隕石が落ちましたね。

直径は1.5mほど。ここから推測すると、もとの大きさは直径17mほどあったのではないかと言われています。



太古の昔から、地球上にはたくさんの隕石が落ちてきていますが、その8割近くが南極で発見されています。

なぜ南極にばかり集中しているのでしょうか。

南極では、岩盤の上に氷河が乗っており、そこに隕石が落ちると、それは氷河の中に埋もれてしまいます。

そして氷河は、海の方へと移動していくのですが、南極にはいくつもの山脈があり、その山のふもとに氷河が当たって止まります。

山のふもとでは、氷河が「昇華」して消えていく、という現象が起こるため、埋もれていた隕石が表面に現れて、発見されやすくなるのです。
(この場合の「昇華」とは、固体が液体になることなしに直接気体になること)

真っ白な氷の上というだけでも目立ちますしね。

南極では隕石が見つかりやすい条件がそろっているということですね。


お読みくださりありがとうございました。